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【コラム】V・プレミアリーグ女子~上位進出を耽々と狙う新指揮官の奮闘

コラム

2017.12.19

2レグを終え、3レグに差しかかったV・プレミアリーグ女子。すでに久光製薬スプリングスがファイナル6進出を決めるなど、ひとつ抜け出している感もあるが、3位以下は1つの勝利や敗戦で大きく順位が入れ替わる混戦模様が続いている。どれほど経験を持つ指揮官にとっても、胃が痛くなるような一戦必勝の争い。今季から初めてV・プレミアリーグで指揮を執る2人の新監督にとっても、貴重な経験になっているのは間違いない。



現在3位のデンソーエアリービーズを率いるのは、川北元監督。アメリカ女子代表、トルコのワクフバンクなどコーチとしては豊富な経験を持ち、全日本女子でもロンドン、リオデジャネイロのオリンピック2大会でコーチを務め、戦術、戦略面を担当していたのは周知の通り。

選手からも「元さん」と慕われる川北監督。ベンチ内でもクリスティアネ,フュルストやデヘリ・ジャン,デヘリギュコーチと直接英語でコミュニケーションを取り、それをチーム内で共有させるなど、「こうしなさい」と単に命じるだけのトップダウンの指導者ではなく、選手の目線に立った指導を常に心がけている。



「いい時も、悪い時もあって当然です。でも、大事なのは結果だけじゃなく、たとえ負けていたとしても、イコール、すべてが悪いということではない、と伝えること。自信を失うことなく、選手を信じて、信頼して託す。僕にできることは、それだけです」

とはいえもちろん、何でもOKということではなく、ダメなものはダメ、と細かなプレーに関してもなぜダメで、どうすべきなのかを選手にも伝える。特にチャンスボールの返球や、二段トス、ブロックフォローなど数字には反映されない細かいプレーこそが勝敗を左右する、と重きを置いており、雑なプレーが目立って敗れた後は「やるべきプレーが全くできていない」と厳しく、課題克服を促すこともある。



若い選手が多く、V・プレミアリーグで戦う経験が少ないこともあり、まずは戦う集団として熱を持つこと。自らが誰よりも熱く指導する監督に対して、全日本でも共に戦った鍋谷友理枝は「コーチの頃から選手の立場を理解していろいろなことを教えてもらったけれど、監督になってもそこは変わらず、でももっと広い目線でアドバイスをしてくれる。元さんは、一緒に戦っている、と思わせてくれる監督です」と絶大な信頼を寄せる。新たな年を迎えれば間もなく3レグも佳境に入り、ファイナル6進出に向けた、より一層厳しさを増した戦いが予想される。自らが先頭に立ち、チームを鼓舞する川北監督にも注目だ。

そしてもう1人、今シーズン、監督として初のリーグを戦うのが日立リヴァーレの甲斐祐之監督だ。昨年まではコーチとして技術指導や、練習メニューの構築が主な仕事だったが、監督と立場が変われば、さらに広い視野で選手に接し、チーム全体に目を配らなければならない。

「自分がずっと男子バレーでやってきて、コーチという立場でも女子を指導する難しさを実感しました。だからこそ、監督になったからといって、『これまでとは違うぞ』という空気を出すのではなく、今までと同じように選手に近い立場に立って一緒にやっていく。僕自身にとっても、1つ1つが初めての経験なので学ぶことばかりだと思っています」

もともとそれほど口数が多いほうではなく、選手も「最初は怖い人だと思っていた」と笑うが、スパイク時の体の使い方や細かな技術のポイントは明確だと好評で、「甲斐さんが打つボールを受けるだけでもうまくなれる気がする」と多くの選手が口を揃える。



現在は8位と苦しい戦いが続くが、嘆いてばかりはいられない。うまくいかない時だからこそ、積極的に新しい戦術や選手起用にも着手し、チームにも「変化する」という意識を植え付ける。これまではなかなか試合出場の機会が少なかった若手選手も積極的に起用すると話しており、3レグもこれまでとは違った戦いが見られることになるはずだ。



「若手もベテランも全員が大事な戦力で、それぞれの役割がある。厳しい状況だからこそ、思い切ったことにも積極的に取り組んでいきたいです」

新しい年に、どんな戦い方で巻き返しを図るのか。勝敗の行方もさることながら、新指揮官の手腕発揮にも大いに期待したい。